古代遺跡は人類の活動の痕跡です。エジプトのピラミッド,ギリシャのパルテノン神殿,ローマのコロッセオなど世界のあちこちに残る古代の遺跡をたどると,その地域で人々が築き上げてきた生活を知ることができます。一方で古代文明は,さまざまな民族や文化,社会が混ざり合い,折り重なって生み出されている側面もあります。一つの国や文化がだけではなく,そこから生まれる国や近隣の諸国と関係を持ちながら,歴史や文化は育まれるものです。 たとえば,ギリシャで生まれた文化や思想がローマに伝わったことで,巨大なコロッセオや長大な水道橋,街道を作る技術が生み出されました。また,そうした技術とそれを裏づける思想がアラビア半島で生まれたイスラーム文化によって育まれ,現代に残る文化的な遺跡になっていることも少なくありません。 また,北インドで誕生した仏教が,中国や日本の芸術や文化に影響を与えました。ミャンマーやタイで盛んになった上座部仏教の影響によって数千にも及ぶ巨大な仏教寺院が建造され,世界遺産にも登録されました。このように古代遺跡は,人類の営みが互いに影響しあいながら発展したという側面もあるのです。 そうした複雑に絡み合った歴史と文化の縦糸と横糸をよりわかりやすく理解するために,本書は写真や図版などのビジュアルをふんだんに活用し,地域ごとに遺跡を紹介しています。文字も残っていない時期の遺跡から,誰もが知っている有名な古代遺跡や巨大な遺跡群まで,ひとつづきの織物のようにつながっている世界の歴史をぜひご堪能ください。
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