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宇宙天体百科

2019年5月号

今月の星座
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星図の日時

04月01日 23時
04月15日 22時
04月31日 21時
05月15日 20時
05月31日 19時

月の満ち欠け
(星図の月は23時)

03月28日 下弦
04月05日 新月(朔)
04月13日 上弦
04月19日 満月(望)
04月27日 下弦

木星状星雲

渡部潤一 国立天文台副台長

 「木星状星雲」は,春の星座・うみへび座の近くにある。うみへび座は,面積が88星座の中で最も広いのだが,天の川からはなれていることもあって,いわゆる名所が少ない,いささかさみしい星座である。
 そんな中で,天文愛好家が望遠鏡を向ける天体の一つが,木星状星雲である。木星状星雲は4等星の「うみへび座μ星」の近くにあり,9等よりもやや明るい天体であるが,ある程度の倍率でなければ恒星と見わけがつかない。ただ,恒星が少ない領域なので,みつけるのはむずかしくない。
 木星状星雲は,「惑星状星雲」の一つである。惑星状星雲は,17〜18世紀にかけて観測された星雲などの中で,形が惑星に似て見えたためにそのようによばれるようになったものだ。実際には惑星とはまったく無関係で,太陽程度の質量の恒星が一生の最期をむかえつつあるときに,外層部を吹き飛ばしている姿であることがわかっている。しかし,惑星状星雲の名称が定着してしまい,そのまま使われている。
 木星状星雲は,惑星状星雲としては典型的な天体で,みずがめ座にある「土星状星雲」と双璧をなしているといっても良いだろう。地球から見たときの直径は約40秒角(1秒角は3600分の1度)と木星とほぼ同じで,天体望遠鏡でながめると,その中心部をなす球形のガスの見え方がきわめて木星によく似ている。 木星状星雲は,イギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェル(1738〜1822)によって1785年に発見された。木星に似ていることは,ハーシェルらも気づいていたが,木星状星雲(英語ではGhost of Jupiter)という名称を確立させたのは,アメリカの天文学者ロバート・バーナムJr. (1931〜1993)だといわれている。


両端の赤い“角”は高速のガス
 撮影された写真を見ると,青みがかった球形のガスの中心部に,恒星の最期の姿の一つである「白色矮星」が11等級の明るさで確認できる。まさにこの星の外層部が放出され,惑星状星雲を形成しつつあるところなのだ。吹き飛ばされている物質の速度は秒速20キロメートルをこえるほどで,1000年から2000年前に放出されたと考えられている。
 さらに写真をよく見ると,内側の殻の両脇に“角”のような構造がある。惑星状星雲でしばしばみられるのだが,南極と北極方向に秒速100キロメートルをこえる高速のガス(ジェット)が吹きだしている証拠である。
 土星状星雲では,このジェットがさらに強く,土星の環のように見えているのだが,木星状星雲ではそれほどではない。いずれにしろ,「双極型」とよばれる惑星状星雲であることはまちがいない。


画像から割りだした立体構造
 惑星状星雲の立体構造を解明するのは容易ではない。画像からわかる物質の2次元の分布から,3次元の構造を探りださなくてはいけないからだ。とはいえ,物質の速度の観測データや対称性を考えることで,空間的な構造が明らかになる場合もある。
 2015年にメキシコの天文学者のグループは,さまざまなデータを組み合わせて,木星状星雲の立体構造をえがいた(上の左側)。外側を大きくとりまく殻は,中心の星から放出されてからの時間が5400年,内側が1400年と考えると,シミュレーションモデルと観測の結果が一致するようである。
 また,10年以上の時間をへだてて撮影されたハッブル宇宙望遠鏡の画像を比較して,殻の大きさの差や,殻が広がる速度を計算し,そこから木星状星雲までの距離を660パーセク(2150光年)と割りだすことにも成功している。誤差は100パーセク程度と小さい。三角測量がなかなか使えない惑星状星雲には有効な手法といえるだろう。

4月の星ごよみ

●上旬 火星とすばるの接近

夕方の西の空に輝く火星が,すばる(プレアデス星団)に接近する。最接近は4月1日ごろ。

●9日 月と火星の接近

月齢4の細い月が火星,おうし座の1等星アルデバランに接近。21時すぎにはヒアデス星団の星を月がかくす。

●12日 水星の西方最大離角

水星が太陽の西に28度ほどはなれ,明け方の地平線の上で,0.5等で輝く。

19日 満月

新緑の季節になると,満月の南中高度も下がり,おぼろ月になる可能性が高い。

●29日 こと座流星群が極大

明け方に上ってくる,こと座に放射点をもつ流星群が極大となり,1時間あたりに多ければ10個ほどの流星が出現することがある。