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宇宙天体百科

2019年1月号

今月の星座
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星図の日時

12月01日 23時
12月15日 22時
12月31日 21時
01月15日 20時
01月31日 19時

月の満ち欠け
(星図の月は23時)

11月30日 下弦
12月07日 新月(朔)
12月15日 上弦
12月23日 満月(望)
12月29日 下弦

ふたご座 エスキモー星雲

渡部潤一 国立天文台副台長

 惑星状星雲(中心にある高温の星が周囲のガスを光らせている星雲)は実にさまざまな形状を示す,とても個性豊かな天体である。しばしばその形状からユニークなニックネームがつけられることがあり,今回紹介する「エスキモー星雲(NGC2392,Caldwell 39ともよばれる)」も,その一つだ。冬の星座,ふたご座のデルタ星から月の直径の5個分ほど南東に見かけ上位置している。もともと,1787年にイギリスの天文学者,ウィリアム・ハーシェル(1738〜1822)によって発見され,古くから知られている天体である。
 見かけの大きさ(視直径)が1分角以下(1分角は60分の1度)と小さく,明るさは10等級と暗いために,小さな天体望遠鏡ではその特徴をつかむことはなかなかできない。しかし,口径の大きな望遠鏡で,ある程度の倍率でながめると,やや非対称な形状が見えてくる。写真に撮影すると,広がったガスが二重構造をなしており,まるで厚い毛皮のフードをかぶった人のようにも見える。なお,星雲の名にあるエスキモーとは,アメリカ大陸の北方などのツンドラ地帯に住む民族をさす言葉だ。
 星雲の“フード”の部分には,放射状に細長くのびている構造(コメタリー・ノット)がある。その姿が彗星(コメット)と似ているがゆえの呼称だ。コメタリー・ノットの分布は一様ではなく,やや密な部分がある。一方,“フード”の内側には,別のガスが分布している。ガスの分布は実に絶妙であり,まるで顔のようだ。“フード”をかぶった“頭部”は幅広く,“顔”の下部に向かって幅がせまくなっており,あごがあるようにも見える。


星雲の“顔”の正体
 基本的に惑星状星雲は,中心星から放射状に広がる形をしている。地球から遠いこともあり,エスキモー星雲の構造はこれまであまりわかっていなかった。近年,星雲から放たれる光をくわしく調べることで,エスキモー星雲の立体構造が推定された。星雲をなすガスが動いている場合,ガスを構成する原子が放つ光の波長は長くなったり短くなったりする。その差分を調べることで,その領域のガスが視線方向に対して,どのくらいの速度でどちらの方向に動いているのかがわかるのだ(いわゆるドップラー効果)。
 解析から推定されたエスキモー星雲は,両極から噴きだすガスの流れ(ジェット)をともなっていることがわかった。コメタリー・ノットは赤道面でリング状に分布しており,“顔”は円盤の内側にある,いささかゆがんだ,繭のような構造であることがわかってきた。これと非常に似た構造をもつ惑星状星雲としては,2017年11月号のこのコーナーで取り上げた「土星状星雲(NGC7009)」があげられる。


地球からの正確な距離は,いまだ謎
 エスキモー星雲の形の謎はかなりとけたが,地球からの正確な距離や中心星の温度など,まだ謎も残されている。そもそも,惑星状星雲の距離を正確に見積もるのはむずかしく,最新の研究においても,エスキモー星雲の地球からの距離の推定値は4000光年〜6000光年と幅が広い。
 星雲の中心星は,もともと質量が太陽の1.7倍程度だった恒星がガスを放出した後の姿とされている。今はちょうど中心核がむきだしになりつつあり,非常に高温になっていると考えられる。中心星の温度は,まわりのガスがどの程度温められているかを調べることで推定され,その値は3万5000度〜9万2000度まで幅がある。こうした推定値のあいまいさに決着がつくのは,相当先になりそうである。

12月の星ごよみ

●2日 金星の最大光輝

明けの明星,金星がマイナス4.7等の最大光輝をむかえ,早朝,東南東の空で輝く。

●4日 金星と月の接近

月齢26.2の細い月が金星に3度ほどまで接近し,明け方に見ごろをむかえる。

●9日 土星と三日月の接近

土星と月齢2.1の三日月が,日没後の西南西の地平線近くで,1度ほどまで大接近する。

14日 ふたご座流星群の極大

三大流星群の一つで,天文ファンにとって定番の流星群が極大となる。今年は,月没後に観察条件がよい。

●22日 こぐま座流星群の極大

毎年ではないが,時々,思いがけない突発的な活動を見せる流星群。今年は満月なので観察条件は悪い。