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宇宙天体百科

2020年1月号

今月の星座
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星図の日時

1201

23時
12月15日 22時
12月31日 21時
01月15日 20時
01月31日 19時

月の満ち欠け
(星図の月は23時)

11月27 新月(朔)
12月04 上弦
12月12日 満月(望)
12月19 下弦

オリオン座 M78

渡部潤一 国立天文台副台長

 

M78,あるいは「M78星雲」という名前に強い親しみをもつのは,筆者を含めて50代以上かもしれない。いうまでもなく,正義の味方「ウルトラマン」の生まれ故郷として記憶にきざみこまれているからである。なかには,M78Mが何を意味するか知らずに覚えている人もいるかもしれない(本誌の読者なら,星雲状の天体のリストを作成したフランスの天文学者,メシエの頭文字であることはご存じだろう)。

 

M78は実在の天体で,そろそろ見えはじめる冬の星座,オリオン座にある。オリオン座には数多くの美しい星雲がある。オリオン座をおおっている巨大な分子雲(主に水素分子からなるガス雲)のあちこちで生まれた星が顔を出し,ガスがその輝きを受けるなどして星雲が輝いている。以前(2015年1月号)この欄で紹介した「M42」もオリオン座にある星雲の一つだ。M42はオリオン座のほぼ中心部にあるが,M78は「三つ星」の東の端から,ベテルギウスの方向やや北側に位置している(星図を参照)。地球からの距離は約1350光年だ。メシエ番号がついているだけに,約8等と明るい散光星雲(ガスなどが可視光線で輝いて見える天体の総称)で,双眼鏡や望遠鏡でながめることが可能だ。M78は,近くの10等星「HD38563A」と「HD38563B」の光を反射して輝いている。

 

星々が生まれつつある複雑な構造の星雲

1780年に,フランスの天文学者ピエール・メシャン(17441804)が「オリオンの右側(実際は左側),星雲状物質に囲まれて2個の核がある」と記述したのが最初の記録である。その後,メシエは「二つの恒星がある小さな星雲で,北側は明確だが,次第に消滅する。中央部が最も濃い」と記録を残すと同時に,カタログの78番目に加えた。19世紀に入ると,アイルランドの天文学者ウィリアム・パーソンズ,通称「ロス卿」(18001867)によって渦状と記述されているが,これは星雲の中央を走る暗黒帯(ちりなどによって光がさえぎられた部分)が曲がっているために勘ちがいしたのだと思われる。コンパクトだが,複雑な形をしているので,その後は領域ごとに別のNGC番号(ニュージェネラルカタログという,メシエカタログとは別のカタログに掲載された天体につけられた番号)がつけられた。M78は「NGC2068」と同一で,実は複雑な星雲の最も明るい部分のことを指す。ほかの部分は,「NGC2064」,「NGC2067」,「NGC2071」などの番号がついている。

 

最近の研究では,星雲の中には星団が生まれつつあり,45個ほどの「おうし座T型星(明るさが周期的に変化する,変光星の一種)」や,17個の「ハービッグ・ハロー天体(新しく生まれた星に付随してできる星雲状の領域)」も確認されている。しばらくすると(といっても,少なくとも100万年程度は必要だが),雲が晴れて星団の姿が見えるようになるかもしれない。

 

M78がウルトラマンの故郷になった理由

天文学的には特別ではない天体であるこのM78星雲を,ウルトラマンの生みの親である円谷英二監督は,なぜウルトラマンの故郷に選んだのだろうか。実は,円谷監督は本来,以前(20145月号)この欄で紹介した銀河「M87」をウルトラマンの故郷にしようとしていたらしい。M87は,おとめ座銀河団の中心に位置する銀河で,強いX線や電波を放つ,きわめて特殊な銀河として話題になっていたからだ。のちに,その活動のエネルギー源が,太陽の65億倍もの質量をもつ超大質量ブラックホールであることがわかった。これは,20194月に史上はじめて直接観測されたことが発表されたブラックホールである。

 

ところが,台本の誤植によって,7と8の数字がひっくり返り,M78になってしまったといわれている。そのおかげで,M78は日本できわめて有名な星雲になったのだ。

12月の星ごよみ

●8日 「2I/ボリソフ」 彗星が近日点通過予定

太陽系外から飛来した史上2番目の彗星が,太陽に最も近づく。世界各地で観測が行われる。

●14日 ふたご座流星群の極大

三大流星群の一つで,天文ファンにとって定番の流星群が,14日から15日にかけて極大となる。今年は夜半過ぎに月明かりが邪魔になり,観測条件はよくない。

●22日 冬至

天文学的には,太陽の黄経が270°なる(春分の日を基準に,地球が太陽のまわりを270°公転した)瞬間を含む日のことをいう。太陽の南中高度が最も低くなる。

●23日 こぐま座流星群が極大

ときどき突発的な活動をみせる流星群。今年は月明かりもなく,観測条件はよい(ただし,極大そのものは正午ごろ)。

●26日 部分日食

日本では15時半ごろに最も欠け,東日本では終了前に日没となる。インドネシアなどでは金環日食となる。今年3回目の日食で,1年に3回の日食がある年はめずらしい。

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