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宇宙天体百科

2019年11月号

今月の星座
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星図の日時

1001日 23時
10月15日 22時
10月30日 21時
11月15日 20時
11月30日 19時

月の満ち欠け
(星図の月は23時)

09月29 新月(朔)
10月06日 上弦
10月14日 満月(望)
1021日 下弦

くじら座 M77

渡部潤一 国立天文台副台長

 秋になると南の空に昇ってくる星座の一つ,くじら座の首元のあたりに,大きな渦巻銀河M77がある。M77までの距離は4000万~5000万光年とかなり遠いのだが,みかけの直径は7分角(1分角は60分の1度)程度,実際の直径は17万光年(天の川銀河の直径は10万光年)と,かなり大きい。また,9等程度と銀河にしては明るく,加えて星が少ない領域にあるために,小さな天体望遠鏡でも容易にみつけられる。口径10センチメートルをこえる望遠鏡では,明るい中心部と,それを取り巻く淡い円盤とが分かれて見えるだろう。

 もともと,18世紀にフランスの天文学者ピエール・メシャン(1744~1804)によって発見され,同じくフランスの天文学者シャルル・メシエ(1730~1817)によって,「メシエカタログ」(メシエがまとめた天体のカタログ)に加えられた。19世紀にはごく一般的な渦巻形状であることが指摘されたこの銀河は,20世紀なかばから天文学者の脚光を浴びていくことになる。

 

巨大ブラックホールをもつ銀河研究の人気者

 見かけはたんなる渦巻銀河なので,アマチュアからはとくに人気がある天体ではない。ところが,天文学者,とくに銀河の研究者からは,これほど人気のある天体はほかにない。この銀河に関する研究論文数は,ほかのすべての銀河に関する論文の総数に匹敵するともいわれている。この銀河は,天文学者からは主に「NGC1068」とよばれており,筆者の知り合いの研究者には,自家用車のナンバーを「1068」にする人すらいる。

 どうしてそれほど人気なのかというと,M77は「活動銀河核」という非常に明るい銀河中心部をもつ特別な銀河であり,またそのような銀河の中ではわれわれに最も近いため,くわしい観測が可能だからである。活動銀河核がみせるはげしい天体現象のエネルギー源は巨大なブラックホールであることがわかっており,M77の中心にも太陽の1000万倍から数億倍の質量をもつブラックホールがあると推定されている。こうしたブラックホールが周囲の物質を飲みこむとき,飲みこまれる物質が高温になって明るく輝く。そのようすをくわしく観測できる“魅力的”な銀河が,このM77なのだ。

 

見える向きで姿がかわる「セイファート銀河」

 このように中心核部分のガスが,明るく,温度が高く,非常に高速で運動する性質をもつ銀河を「セイファート銀河」とよぶ。アメリカの天文学者カール・セイファート(1911~1960)が,20世紀なかばにそうした特異な銀河を見いだし,分類したことが名前の由来だ。その初期の論文にもM77は含まれている。セイファート銀河の中心核付近では,秒速数千キロメートルにも達する猛烈なスピードでガスが運動している。このガスの大部分は,巨大なブラックホールを取り巻く「降着円盤」とよばれるガス円盤をなしており,一部のガスは「ジェット」とよばれる上下方向に吹きだす超高速のガス流になっている。

 中心のブラックホールが巨大であればあるほど降着円盤も大きく,また円盤より外側にガスやちり(炭素などからなる小さな粒)によるドーナツ状の構造が生まれることがある。そのため,見る向きによっては,外側にあって温度が比較的低いドーナツ状の構造が,内側にあって温度が高い降着円盤をかくしてしまうケースもある。一方,円盤を見下ろすような位置関係だと,高温のガスが光っている部分を直接見ることができるので,中心核が明るく輝いて見える。後者のような場合を「1型セイファート銀河」,前者のような場合を「2型セイファート銀河」という(ジェットを真上から見る場合には「ブレーザー」という)。M77は2型セイファート銀河の典型だ。

10月の星ごよみ

●9日 10月りゅう座流星群の極大

「ジャコビニ流星群」ともよばれていた流星群で,ほぼ13年ごとに活動する。今年は8日深夜23時ごろから数時間ほど出現が期待されるが,月明かりがあるので観測条件は悪い。

●11日 十三夜

旧暦の9月13日。栗名月,あるいは,のちの月ともよぶ。十五夜とともに日本では古来からお月見をしてきた。月はみずがめ座の方向に輝く。

●20日 水星の東方最大離角

水星が,日没後の西の地平線近くでマイナス0.1等で輝く。「宵の明星」となった金星の左側にあり,観測の好機である。

●22日 オリオン座流星群が極大

ハレー彗星を起源とする流星群。明け方に,1時間あたり数十個程度の活発な出現が期待できるが,今年は月明かりが邪魔で観測条件は悪い。

●28日 天王星の衝

天王星がおひつじ座で衝になる(地球から見て太陽と正反対の方向に位置する)。明るさは5.7等であり,星が少ない領域でもあるため,小さな望遠鏡でも確認できるだろう。