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宇宙天体百科

2018年11月号

今月の星座
▲クリックすると,拡大画像が表示されます。

星図の日時

10月01日 23時
10月15日 22時
10月31日 21時
11月15日 20時
11月30日 19時

月の満ち欠け
(星図の月は23時)

09月25日 満月(望)
10月02日 下弦
10月09日 新月(朔)
10月17日 上弦
10月25日 満月(望)

ペルセウス座 カリフォルニア星雲

渡部潤一 国立天文台副台長

 秋の星座であるペルセウス座には,アマチュア天文家や天体写真家にとって見所となる著名な天体がいくつかある。その一つが「カリフォルニア星雲(NGC1499)」である。
 この星雲は,アメリカの天文学者,エドワード・エマーソン・バーナード(1857〜1923)によって1884年に発見された。その形状がアメリカのカリフォルニア州に似ていることから,この通称がついた。ちなみにカリフォルニア州では,この星雲が秋から冬にかけてほぼ真上を通過し,偶然の一致が面白い。
 カリフォルニア星雲は分子雲の一部であり,「輝線星雲」に分類される。この星雲を写真に撮ると,水素原子の放つ光によって赤色に写る。ただ,全体の長さが角度で2.5度(実際の長さは約100光年)もあるので,表面輝度はいちじるしく低い。天体望遠鏡や双眼鏡を用いても目で観察するのは困難である。
 この星雲を光らせているのは,すぐ近くにある恒星,ペルセウス座ξ星(メンキブ)である。明るさが4等ほどの「O型星」で,質量は太陽の質量の30倍ほどもある。表面温度は3万度をこえ,きわめて高い。そのため,メンキブは大量の紫外線を放出する。この紫外線が星雲中の水素原子を電離させることで,カリフォルニア星雲が光っているのだ。メンキブは地球から約1200光年の距離にあると推定されているので,カリフォルニア星雲も,そのくらいの距離にあると考えられている。


星を生まない星雲
 星間分子雲や暗黒星雲(背後の星や星雲の光をさえぎる分子雲)は一般に,恒星を生みだす母体であると思われている。しかし,すべての分子雲が星を生むわけではない。むしろ星を生まない分子雲のほうが多数を占める。どうやら,カリフォルニア星雲とその周辺も,その部類らしい。
 電波で観測すると,カリフォルニア星雲から北側に向かっておうし座へとつらなる,複雑な分子雲が存在しているのがわかる。分子雲は12個のかたまりにわかれており,一つ一つのかたまりの中にはさらに,ガスやちりが密集している小さなかたまりが34個見いだされている。
 この小さなかたまりの質量を見積もると,太陽の20倍〜2000倍ほどであり,ここで恒星が生まれてもおかしくない。ところが,小さなガスのかたまりはあまりに速く運動しており,ガスが収縮して恒星をつくれるような状況ではないことが,電波観測によって明らかになった。カリフォルニア星雲は,メンキブのおかげで光っているだけで,今後も星を生みそうにはないようである。  


ガスを吹きだし,ちりを熱する
 高温のメンキブの威力はすさまじい。長さ100光年もあるカリフォルニア星雲全体を光らせているだけでなく,強力な恒星風(恒星から吹きだすガスの流れ)によって,宇宙空間に衝撃波をつくりだしている。その影響を受け,星間空間でちりが熱せられているのだ。
 通常の可視光線では,熱せられたちりのようすを見ることはできない。しかし赤外線で観測すると,メンキブとカリフォルニア星雲の間に,熱いちりの“雲”を見ることができる。実際,NASAの赤外線宇宙望遠鏡「WISE」が撮影した画像では,熱いちりの“雲”がはっきりと見えている(上の画像)。カリフォルニア星雲に含まれているちりとくらべるとはるかに高温なのだ。もしもメンキブのような恒星が地球の近くにあったら,地球の環境に大きな影響をあたえていたかもしれない。

星ごよみ

●10月9日 10月りゅう座流星群の極大

かつて「ジャコビニ流星群」ともよばれていた流星群で,ほぼ13年ごとに活動する。今年はヨーロッパ方面で出現が期待される。

●10月15日 土星と月の接近 

宵の南西の空で,土星に下弦前の月が接近する。

●10月18日 火星と月の接近

地球への大接近をすぎ,暗くなりつつある火星に下弦すぎの月齢9.4の月が接近する。宵のうちから月が沈むまで火星に近づいていくようすが見られる。

1022日 オリオン座流星群が極大

ハレー彗星を起源とする流星群で,1時間当たり数十個程度の活発な出現が期待できる。今年は月明かりが邪魔をして観測条件は悪い。

●10月24日 天王星の衝

天王星がおひつじ座で衝(地球から見て太陽と正反対の方向に位置する)をむかえる。明るさは5.7等であり,星が少ない領域でもあるため,小さな望遠鏡で確認できるだろう。