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宇宙天体百科

2019年7月号

今月の星座
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星図の日時

06月01日 23時
06月15日 22時
06月30日 21時
07月15日 20時
07月30日 19時

月の満ち欠け
(星図の月は23時)

05月27日 下弦
06月03日 新月(朔)
06月10日 上弦
06月17日 満月(望)
06月25日 下弦

バーナード星

渡部潤一 国立天文台副台長

 肉眼では見えないものの,天文学の世界で有名な恒星の一つに,バーナード星がある。へびつかい座にある9.5等のみかけは平凡な星で,太陽の質量の約7分の1の赤色矮星であるが,実は知られているかぎり全天で最も大きな固有運動(天球上で恒星がみかけ上,動いていく現象,およびその速度)をもっている。そのスピードは1年あたり10秒角(1秒角は3600分の1度)をこえるほどで,ほぼ真北の方向に動いている。これは,6年で1分角(60分の1度),200年ほどで月の直径ほども動くレベルだ。
 このため,昔のデータを見くらべると,そこになかった星が存在しているようにみえることもあり,新星(星の爆発現象で,夜空に星が新しく生まれたようにみえる現象)とまちがえられることもしばしばである。発見者はアメリカの天文学者エドワード・エマーソン・バーナード(1857〜1923)。彼が22年ほど間隔があいた写真乾板を見くらべて1916年にみいだしたため,その名がついた。
 現在,バーナード星はへびつかい座のベータ星とガンマ星の近くで,天の川の比較的星がこんでいるところにある。しかし,紀元5400年ごろには,ずっと北に移動し,ヘルクレス座に入ってくるはずである。


大きく動く理由
 バーナード星が大きな固有運動をもつ理由の一つは,われわれの住む地球に近いからである。距離でいえば約6光年と,ケンタウルス座アルファ星の約4光年に次いで近い,いわゆる近距離星である。近ければ近いほどみかけの動きは速くなる。バーナード星は,これから地球に近づいてきて,計算によれば約1万年後には約3.75光年まで接近するようである。
 もう一つ,大きな固有運動をもつ理由は,バーナード星がもともと空間的に高速で移動しているためである。われわれから見て横に移動するみかけの運動は,固有運動として観測されるが,視線方向(手前・奥の方向)の運動は,その星のスペクトル(光の波長に対する強度の分布)をはかって,ドップラー効果で計測する。ドップラー効果とは,光源が運動している場合に光の波長が変化する現象だ。
 バーナード星の視線方向の速度は秒速110キロメートル。固有運動の分を含めると,秒速約140キロメートルにも達する猛スピードで動いているのである。これは太陽の空間速度である秒速約25キロメートルと比較すると5倍以上である。銀河系の円盤部分で生まれた恒星は,その円盤にほぼ沿って銀河の中心をすなおに公転する軌道をとるので,一部の例外を除くとそれほど大きな速度はもたない。つまりバーナード星は円盤と無関係に生まれたハロー(銀河を球状に取り囲むような領域)に属する非常に古い恒星であると考えられている。


2018年11月,惑星が発見された
 バーナード星は歴史的に,惑星をもっている可能性が指摘されていたこともある。しかし,現在ではそれらの報告は観測誤差の範囲内であったと考えられている。
 ところが2018年11月,このバーナード星の周囲を公転する惑星の発見が報告された。今回は観測精度も上がっており,確かに存在しそうだと思われる。いずれにしろ,われわれから非常に近い恒星での惑星の発見となる。その惑星はバーナード星から約6000万キロメートルの距離を233日ほどの周期で公転しているとされる。金星よりも内側を公転しているのだが,まったく暑い環境ではないだろう。というのも,主星であるバーナード星が赤色矮星だからだ。
 赤色矮星の質量は小さく,表面温度も低く,暗いために,この惑星が受け取るエネルギー量は,地球が太陽から受けているエネルギーのわずか2%と推定される。そのため,この惑星の表面はマイナス170℃の極寒の地であろう。残念ながら,水が液体になれる範囲,ハビタブルゾーンとはほど遠い環境といえそうだ。

6月の星ごよみ

●11日 木星の衝

木星がへびつかい座で衝(惑星が,地球をはさんで太陽と正反対の方向にくること)をむかえ,マイナス2.6等で輝く。観察の好機である。

●18日 火星と水星の接近

日没後の西北西の地平線近くで,火星が水星と16分角まで接近する天体ショーとなる。

●22日 夏至

太陽の黄経が90度になる夏至となって,北半球では最も太陽が高く上がり,1年のうちで昼間がいちばん長くなる。

24日 水星の東方最大離角

水星が,太陽から25度ほど東にはなれ,夕方の空低く0.6等で輝く。

●下旬 6月うしかい座流星群の極大

まれに出現する流星群で,1998年に出現したが,その後は姿をみせていない。27日前後に出現する可能性があるので注意が必要。