「無」と聞くと,皆さんは何を思い浮かべるでしょうか? 「空っぽ」「空虚」「虚無感」等々,「何もない」状態を思い浮かべることでしょう。 ところが,物理の世界の「無」は,そんなつまらないものではありません。物理の世界で「無」といえば,「真空」があげられます。真空とは,「物質がまったく存在しない空間」のことです。しかし,たとえすべての物質を取り去って完全な真空をつくりだせたとしても,その空間にはエネルギーが満ちており,見えない粒子で沸き立っているというのです! このような「無」の世界の研究は,古代ギリシアにまでさかのぼります。古代ギリシアでは,「完全な真空など存在しない」とされていました。そしてその考え方は実に2000 年以上にわたって信じられていたのです。ところが,17 世紀にトリチェリが行った真空実験によって,はじめて真空の存在が実証されると,「無」についての研究がさかんに行われるようになりました。無の追求は,「存在とは何か」の追求にもつながります。20世紀にはミクロな視点で物の存在について考える新しい物理理論「量子論」が誕生しました。量子論は,アインシュタインの相対性理論とともに「宇宙誕生」という,現代物理学が追求する究極の謎にせまる必要不可欠な理論となりました。これらの理論から,この宇宙は「無」から生まれたという考え方も誕生したのです。 そう,「無」とは「何もない」どころか,ダイナミックかつエキサイティングな世界なのです。ニュートン先生の「無とは何か講義」で,「無」の面白さにぜひ触れてみてください。 |