「死」は,多くの人にとって,なるべく遠ざけておきたいものでしょう。しかし,生あるものには必ず「死」が訪れ,逃れることはできません。なぜ生き物は死ぬのでしょうか? なぜ永遠に生きていることができないのでしょうか? 生物はもともと,自ら分裂して増殖(無性生殖)する「1 倍体生物」しかいませんでした。つまり,生物が誕生した当時,「死」は存在しなかったのです。ところが,進化の過程で,雌雄が合わさって増殖(有性生殖)する「2倍体生物」があらわれました。分裂して増殖するだけの1倍体生物とことなり,2倍体生物は雌雄の遺伝子が混ざり合うため,ことなる性質をもつ個体が誕生します。つまり,「寒さに強い」とか「体が大きい」などの多様性が生まれるのです。 個体が成長すると,親は死にます。しかし,少しずつ性質のことなる遺伝子を残し,多様性を増すことができれば,たとえば急激な環境の変化がおきたとき,それに対応できる遺伝子をもつ個体は生き残ることができ,種の絶滅を防ぐことができます。生物を取りまく環境は常に変化し,その変化に耐えられなければ,生物は絶滅してしまいます。つまり,死は生命をつなぐための“戦略”であり,生物が進化していくための原動力ともいえるのです。 本書は,「死とは何か」を,科学的な視点でひもといていくニュートン先生の講義です。この本を読めば,今まで見えなかった「死」についての新たな側面が見えてくることでしょう。 |