今から100年前,画期的な物理理論が誕生しました。この新しい物理理論は,従来の物理理論では説明できなかった自然現象のしくみを次々に解き明かし,現代のテクノロジーの基礎を築くに至りました。このとんでもなくすごい物理理論が「量子論(量子力学)」です。 すべての物質は,細かく分割していくと,原子に行き着きます。原子の大きさは約1000万分の1ミリメートルです。量子論は,このミクロな領域の物理理論です。 ミクロな世界では,マクロの世界の物理理論は通用しません。たとえば,ミクロな物質は波の性質をもち,なおかつ粒子としての性質ももちます。また,一つの物質はあらゆる場所に同時に存在し,観測することではじめてその位置が決定します。これらの理論は理解しがたいものですが,この常識をこえた物理理論のおかげで,原子の真の構造が明らかになり,化学反応のしくみも解明されました。コンピューターやスマートフォンに欠かせない半導体の性質も,量子論によって明らかになったのです。つまり,私たちが生きているIT社会は,量子論によって生みだされたといっても過言ではないのです。 現在,世界中で量子論の特徴を利用した「量子コンピューター」をはじめ,「量子テレポーテーション」といった新たな技術の開発が進んでいます。量子論の誕生によって,SF映画で描かれた世界が現実となる時代が,もうすぐそこまで来ているのかもしれません。本書は,量子論の世界をわかりやすく説明するニュートン先生の講義です。いとも不思議な量子論の世界に触れてみてください。 |