無という言葉は「何も存在しないこと」を意味する。そのような「無」は退屈で,とくに論ずることはないように思えるかもしれない。しかし,科学者たちはそうは考えない。たとえばアメリカの物理学者レオナルド・サスキンド博士は,「無のすべてを知る者は,すべてを知りつくす」と言う。 現代物理学によれば,空間からあらゆる物質を取り除いて「無の空間」(完全な真空)をつくったとしても,そこには無数の素粒子がわき立っているらしい。また,時間や空間さえ存在しない「究極の無」から,宇宙が誕生するというおどろくべき仮説も提案されている。 本書を通じて,不思議な「無」の世界を楽しんでほしい。