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宇宙天体百科

2017年2月号

今月の星座
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星図の日時

1月1日 23時
1月15日 22時
1月31日 21時
2月15日 20時
2月28日 19時

月の満ち欠け
(星図の月は23時)

12月29日 新月(朔)
1月6日 上弦
1月12日 満月(望)
1月20日 下弦
1月28日 新月(朔)

りゅうこつ座 イータカリーナ星雲

渡部潤一 国立天文台副台長

 南天の「りゅうこつ座」にある「イータカリーナ星雲」は,質量が大きい星が生まれている領域の一つである。2017年1月号のこのコーナーで紹介した,質量が小さい星々を生みだしつつある「おうし座分子雲」とは対照的だ。
 イータカリーナ星雲は,地球から約8000光年ほどの距離にある,わが銀河系を代表する大きな星雲である。「暗黒星雲(星間ガスやちりが濃く集まり,背景の星や銀河などの光を通さない星雲)」と「散光星雲」,そして巨大な明るい恒星を含む「散開星団」などが入りまじってできている。そのみかけの大きさは,オリオン座の方向にある散光星雲である「オリオン大星雲」の4倍以上にもなり,実際の直径は200光年はあるとされている。イータカリーナ星雲には,冷たい分子雲(星間ガスやちりが濃く集まっている領域)が残されており,それらは暗黒星雲となって星雲のあちこちに散在している。

岩山状や鍵穴状の星雲が存在
 イータカリーナ星雲のみどころの一つは,「ハッブル宇宙望遠鏡」が打ち上げ20周年記念として撮影したことでも知られる「ミスティック・マウンテン」であろう。イータカリーナ星雲の中心部にある,細長い岩山のような形状をした暗黒星雲だ。
 ミスティック・マウンテンは,まわりの恒星からの強烈な紫外線を受け,暗黒星雲の表面が電離して光っている。その高さは3光年ほどで,頂点はまるで想像上の宇宙人のように見える。さらに,頂点部分をはじめとして,細長い雲が左右にのびているのがわかる。いわゆる「ハービック・ハロー天体」とよばれる,原始星(赤外線を放射する天体で,やがて恒星になる)からのジェットである。星が生まれつつあるときには,星に落ちこむガスがその周囲を取り囲み,円盤をつくる。その円盤に垂直な二方向に(双極状に),ガスが高速で飛びだしていく。これらがジェットとして見えているのである。ジェットの根元には,まさに今,生まれつつある原始星が埋もれている。
 イータカリーナ星雲には,もっと“静かな”暗黒星雲も存在している。その一つが,「鍵穴星雲」である。その形がちょうど鍵穴のように見えることから,その名がついた。明るい散光星雲を背景に,やや濃いちりとガスのシルエットが,浮き上がって見えているのである。鍵穴の大きさは,7光年ほどと推定されている。

星雲で二つの巨大な恒星が誕生
 イータカリーナ星雲の名称は,りゅうこつ座「イータ星」に由来している。イータ星は,この星雲で生まれたと考えられる巨大な恒星の一つであり,銀河系で最大級ともいわれる二つの巨大な恒星がたがいをまわり合う「連星」である。連星をなす恒星の一つ(主星)は「高光度青色変光星」とよばれる種類のもので,太陽の100倍以上の質量をもち,いつ超新星爆発(重い星がその最期におこす大爆発)をおこしてもおかしくはない。伴星はやや小さいが,その質量は太陽の30倍から80倍ほどの間にもなると推定されている。主星と伴星は5年ほどの周期で公転している。
 イータ星は,全体として太陽の数百万倍の明るさを放っている。もともと4等星として記録されていたが,19世紀半ばに主星が大爆発をおこし,1等星をこえる明るさになった。その後,肉眼で見えなくなるほど暗くなってしまったが,20世紀半ばからふたたび明るくなりはじめ,現在はほぼ4等星の明るさにまで回復している。
 この主星の大爆発によって,主星から放出された物質がイータ星をかくしてしまった可能性がある。実際,イータ星をよく調べると,人形のような星雲に包まれていることがわかる。これは「ホムンキュラス(人形の意味)星雲」とよばれている。
 この大爆発は,当初は超新星爆発ではないかとも疑われたが,現在は「擬似的超新星爆発」とよばれている。最終的な爆発に至る前におきる何らかの爆発的現象とされているが,その詳細なしくみはよくわかっていない。

星ごよみ

●1月3日 しぶんぎ座流星群の極大

三大流星群の一つで,天文ファンにとって“仕事はじめ”の流星群が,3日深夜から4日にかけて極大となる。今年は月明かりがなく,観察条件はよい。

●1月9日 アルデバラン食

おうし座の1等星「アルデバラン」が深夜に月の暗い縁に潜入し,約1時間後に明るい縁から出現するようすが見られる。

●1月12日 金星の東方最大離角

宵の明星である金星が,太陽の東側に47度ほどはなれ,夕方の西の夜空に輝く。

●1月12日 満月

冬の満月は高く上り,天頂近くを通過するため,「月天心」とよばれている。

●1月19日 水星の西方最大離角

水星が太陽の西側に24度ほどはなれ,明け方の東の地平線低くでマイナス0.1等で輝く。