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宇宙天体百科

2018年6月号

今月の星座
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星図の日時

05月01日 23時
05月15日 22時
05月31日 21時
06月15日 20時
06月31日 19時

月の満ち欠け
(星図の月は23時)

04月30日 満月(望)
05月08日 下弦
05月15日 新月(朔)
05月22日 上弦
05月29日 満月(望)

球状星団 M4

渡部潤一 国立天文台副台長

 肉眼で見えないような天体を,天体望遠鏡に導入(視野内に入れること)してながめるのは,なかなか容易ではない。自動導入装置(見たい天体を自動的に探しだしてくれる装置)が完備されていないと,肉眼で見えるような星からたどっていくことになる。しかし,たどる道のりが長ければ長いほど,むずかしいものである。なれないと,結局たどり着けないことも多い。
 球状星団はとくに探しづらい。肉眼で見えるような球状星団は限られていて,全天で最も明るいオメガ星団は南の低い位置にあるので,なかなか見えない。北天で最も明るいヘルクレス座の球状星団M13は,日本ではほぼ天頂を通過するため,観測条件はすぐれているが,明るさは約6等と,肉眼でぎりぎりみえる程度だ。そのうえ,ガイドになるべきヘルクレス座の星々が,それほど明るくないので探しにくい。
 そのようななかで,探しやすさナンバー1の球状星団が,さそり座のM4である。なにしろ,よく目立つさそり座の1等星,アンタレスのすぐそばにあるからだ。その角距離は1度20分(1分は1度の60分の1)ほど。見かけの距離は満月3個分弱ほどしか離れておらず,すぐとなりといってもいい。通常の双眼鏡なら,アンタレスを導入すれば,同じ視野の中で,西側(右側)に見える。明るさは7等級であり,双眼鏡レベルではアンタレスに最も近い天体といっても過言ではなく,まちがいようがない。視野の中で,赤い色で鋭く輝くアンタレスと,恒星像よりもいささかぼけたような球状星団M4の見え方は対照的である。
 ただ,双眼鏡ではそれほど恒星とかわりないように見えるので,自信がもてないかもしれない。しかし天体望遠鏡であれば,球状星団特有の広がった姿を見ることができる。望遠鏡をアンタレスに向け,それから少し西(天体望遠鏡では逆像になるので左側)へ振れば,視野に入れることができるだろう。  


まばらな球状星団
 実は,M4は球状星団としてはまばらな部類に属する。球状星団のまばらさをあらわす指標としては,アメリカの天文学者ハーロー・シャプレイ(1885〜1972)によって集中度が12段階であらわされた分類システムがあるが,M4はクラスIX(9),つまりかなりまばらである。そのため,天体望遠鏡の倍率をある程度高くしてながめると,恒星がまばらに分離したようすがすぐにわかる。全体としては丸いのだが,11等星ほどの微光星が2分半ほどの長さで,中央をつらぬくように南北にならんでいるのが目立つ。この棒状構造は,1783年にイギリスのウィリアム・ハーシェル(1738〜1822)によってみいだされ,「尾根」と表現されている。
 ただ,この球状星団の発見は,もっとずっと前である。スイスの天文学者ジャン・フィリップ・ロワ・ド・シェゾー(1718〜1751)が1746年に最初にみいだした記録がある。シャルル・メシエ(1730〜1817)がメシエカタログの4番目に登録したのは1764年である。  


推定よりもずっと近かった?
 直径約70光年ほどの球状星団M4の中には,変光星や中性子星,白色矮星も検出され,くわしく研究されている。もともとM4は,球状星団としてはまばらで個々の恒星の研究がしやすいうえ,比較的近いせいである。
 その距離は約7000光年程度と推定されていたが,最近になって,三角視差(距離を測りたい物体を2か所から観測し,その見かけの方向の違いから距離を割り出す方法)で距離推定がなされた。ヨーロッパの位置天文衛星GAIAによる推定値は5900光年であり,1000光年近く縮まったことになる。これは球状星団で三角視差が適用された最初の例である。ただ,この距離推定には1500光年ほどの誤差があるので,実際にどのくらいの距離にあるのかはまだよくわからない。

星ごよみ

●5月2日 八十八夜 

雑節の一つで,立春からかぞえて88日目の日。この日を前後に春から夏へと季節が変わる。

●5月6日 みずがめ座イータ流星群の極大

早朝,みずがめ座に放射点をもつ流星が散見される。1時間あたり10個以上の,速度の速い流星が見られる。下弦前の月明かりの影響があり,観察条件はよくない。

59日 木星の衝

木星がてんびん座で衝(惑星が,地球をはさんで太陽と正反対の方向に来ること)をむかえ,マイナス2.5等で輝く。

●5月22日 月面Xの出現

17時頃,上弦過ぎの月の明暗境界線にX字模様が出現する。日没前になるが天体望遠鏡を使うと見える可能性が高い。

●5月27日 月と木星の接近

衝をすぎた木星に満月前の月が接近する。最接近は日付が変わった28日2時すぎである。