HOME > 科学雑誌Newton > 宇宙天体百科

宇宙天体百科

2017年12月号

今月の星座
▲クリックすると,拡大画像が表示されます。

星図の日時

11月01日 23時
11月15日 22時
11月30日 21時
12月15日 20時
12月31日 19時

月の満ち欠け
(星図の月は23時)

10月28日 上弦
11月04日 満月(望)
11月11日 下弦
11月18日 新月(朔)
11月27日 上弦

ヒアデス星団

渡部潤一 国立天文台副台長

 落ち葉が散るころになると,すばる(プレアデス星団)の後を追うように,オレンジ色の星と共にVの字型に並んだ青い星たちが上ってくる。冬の代表星座の一つ,おうし座の顔にあたる星の並び,ヒアデス星団である。オレンジ色の明るい星は1等星のアルデバランで,おうしの赤い目にあたるが,星団には属していない。アルデバラン以外のVの字をなしている3等星から4等星の星たちが星団の主要メンバーだ。日本では,その形から釣鐘星などと呼ばれ,また記紀神話に登場する猿田彦の神の顔に見立てられてきたとも言われている。  ヒアデス星団は,すばるに比べると,明らかに星の密集度が低い。これは地球からの距離が最も近い散開星団であるための,見かけの効果もある。だが,なによりも年齢が約6億年と,散開星団としては年寄りであるために,実際に空間的な星の密集度も低いからである。  散開星団は,生まれた直後は密集度が高いのだが,その星たちを重力でつなぎ止めていた母親の星雲が雲散霧消すると,星たちの相互の間隔は次第に広がっていく。また,銀河系を周回するうちに,銀河系の重力を受け,一つ,また一つとメンバーの星が星団から離れて独り立ちしていく。したがって,年齢と共に星の密集度は低くなっていくのである。  実際,ヒアデス星団のメンバーのうち,おうし座ガンマ星,デルタ星,イプシロン星,シータ星などの明るい恒星は,すでに水素燃料が尽きかけて,老齢期の巨星への進化段階にある。これに対し,すばるは年齢が約1億年程度とされるため,まだこうした恒星は見られない。

運動のしかたから距離を推定
 ヒアデス星団は,太陽系に最も近い散開星団であり,かつその運動もよく測定されていた運動星団なので,距離の決定が可能だ。メンバーの星たちの固有運動を図にしていくと,天球上の一点に収束する。この収束点の方向と,星団の実際の運動のようすから,星団までの距離を幾何学的に計算することができる。このような距離の推定方法を「運動星団法」とよぶ。  ちなみに筆者は,大学の学生実習として,この課題に取り組んだことがあるが,その面白さの虜になってしまった記憶がある。現在では,恒星の位置観測専用の宇宙望遠鏡の登場により,ヒアデス星団程度の恒星の距離は,運動星団法を用いることなく,直接に三角測量ができるようになったが,先人の積み上げてきた工夫には舌を巻いたものだ。  ヒアデス星団の中心までの距離は約150光年,半径10光年程度だが,メンバーとおぼしき恒星は,約30光年ほどの潮汐半径(銀河系の重力の影響によって恒星がばらばらにならない半径)よりも外にまで広がっている。

プレセペ星団と“母親”が一緒?
 面白いことに,宇宙空間内での運動や年齢を調べると,ヒアデス星団と起源を同じくすると思われる散開星団がある。春の星座,かに座にあるプレセペ星団だ。生まれた母親の星雲が同じなら,含まれる金属量(水素とヘリウムよりも重い元素の含有量)が同じになるはずだが,実際,プレセペ星団とヒアデス星団に属する恒星は,どちらも太陽よりも金属量がやや多い。6億年ほど前,両者は同じ母親から生まれ,分かれていったのかもしれない。

星ごよみ

●10月11日 レグルスの食

深夜0時前に,月齢23の月に,しし座の1等星レグルスが隠され,12日0時30分から40分にかけて暗縁から出現する。潜入は仙台以南では月の出前になるので見えない。

●10月上旬〜中旬 おうし座流星群の極大

周期彗星の中で最も短い3.3年の周期を持つエンケ彗星を母親とする流星群の最盛期。1時間に数個程度の出現ながら,ゆっくりとした明るい流星が楽しめるが,今年は月明かりが邪魔になる。

●10月13日 木星と金星の接近

日の出前の東南東の地平線近くで,木星と明けの明星,金星が接近する。

●10月18日 しし座流星群の極大

かつては1時間あたり数千個の大出現を見せた。今年は大規模な出現はないが,明け方に速度の速い派手な流れ星が散見される

●10月24日 水星の東方最大離角

水星が太陽から東へ22度ほど離れ,日没後の西の地平線近くで0等級で輝き,観測好機となる。