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宇宙天体百科

2017年8月号

今月の星座
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星図の日時

7月01日 23時
7月15日 22時
7月31日 21時
8月15日 20時
8月31日 19時

月の満ち欠け
(星図の月は23時)

6月24日 新月(朔)
7月01日 上弦
7月09 満月(望)
7月17日 下弦
7月23日 新月(朔)

アンタレス

渡部潤一 国立天文台副台長

 夏を代表する黄道星座の一つであるさそり座は,その見事な配列におもわずうなってしまう星座だろう。そのさそりの心臓に位置するのが,赤い一等星アンタレスである。明るく目立つことと,大接近をおこす時期の火星と並んで輝くことから,アンチ・マーズ(火星の敵)という意味で命名された恒星だ。地球からの距離は550光年ほどで,さそり座─ケンタウルス座 OBアソシエーションと呼ばれる恒星の集団の一員である。(この集団については,今年4月に発売されたNewton別冊『宇宙天体入門』に掲載されている。)
 赤さの原因は,アンタレスが赤色超巨星だからである。その質量は太陽の12倍もあると考えられている。これだけ重い星はあっというまに進化してしまって,外層部がどんどんふくれて低温になっていく。現在,推定されている半径は太陽の800~900倍だ。太陽に置きかえたら,火星を飲みこんでしまうほどだ。表面積が膨大にふえる分,単位面積あたりのエネルギー量は減ってしまい,その表面温度は3400度前後と,太陽にくらべると2000度以上も低い。そのため,赤く輝いているわけである。 夜空の暗いところでながめると,天の川よりも西側でアンタレスは赤く輝いていて,まさに宮沢賢治(1896~1933)の『銀河鉄道の夜』のさそりの火のごとくである。

超新星爆発の直前の星
 アンタレスは,冬の一等星ベテルギウスと並んで近い将来,超新星爆発をおこす可能性のある有力な候補の恒星の一つだ。アンタレスの誕生は約1200万年前とされており,この質量の恒星でいえば,ほぼ寿命はつきかけており,おそらく数十万年以内には確実に超新星爆発をおこすと推定されている。
 アンタレスの現在の太陽系からの距離は,ベテルギウスよりも若干近いので,もし超新星爆発をおこせば,数か月間は満月級の明るさで輝き,昼でもみえるのは確実だろう。不安定な時期に入っているのは確実で,アンタレスはベテルギウスほど明るさの変動幅はないのだが,変光星であり,膨張収縮を不規則にくりかえしている。意外にベテルギウスよりも早く爆発したりするかもしれないが,予測は不可能である。

月にかくされる一等星
 オーストリアの天文学者ヨハン・ビュルグ(1766~1835)が,1819年,観測中にアンタレスの連星となる伴星を発見した,と主張したことがある。実際,1848年にスコットランドの天文学者ジェームス・ウィリアム・グラント(1788~1865)がその存在を確認し,アンタレスBと命名された。こちらも巨星で,太陽の7倍ほどの質量をもち,半径が太陽の5倍ほどの青色である。アンタレスに極めて近く,3秒角(3600分の3度)ほどしか離れていないので,5.5等の明るさながら,ながめるのはなかなかむずかしい。天文学的な観測もむずかしいために,その軌道もよくわかっていないが,その周期は数千年前後といわれている。
 アンタレスは黄道に近いため,しばしば月による掩蔽(えんぺい,恒星や惑星などをかくす現象)がおこる。この掩蔽をくわしく観測すると,恒星の直径を推定することができる。伴星は青色なのだが,条件のいいときに天体望遠鏡でながめると,アンタレスの赤色との対比で緑色にみえるといわれている。アンタレスが月にかくされるときに挑戦してみる手はある。伴星の方が西側にあるので,月から出現する時に,伴星から先にあらわれるからだ。日本では2005年に条件のいいアンタレス食がおこったが,次回は2023年になりそうである。

星ごよみ

●7月  1日 月面X

19時ごろ,木星に接近している上弦すぎの月の明暗境界線にX字模様が出現する。

●7月  4日 地球が遠日点通過

地球が太陽から1.017天文単位と最も離れる。太陽の見かけの大きさも2%ほど小さくなる。

●7月  7日 新暦の七夕

学校などで,笹飾りが飾られたりするが,伝統的な七夕の日は今年は8月28日になる。

●7月25日 水星食

月齢2の細い月が沈む直前,明縁から水星が出現する。東京では19時50分ごろで,高度が3度しかないが,低空までよく晴れていれば美しく感動的な現象となるだろう。すぐ近くに,しし座の一等星レグレスもみえる。

●7月下旬 みずがめ・やぎ座流星群の極大

みずがめ座デルタ南北流星群と,やぎ座アルファ流星群が散見される。月明かりがないので,観察条件はよい。