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2012年6月号
 

 

金環日食

渡部潤一
国立天文台副台長

 2012年は「天文現象の金の年」といわれている。金環日食,金星の太陽面通過,金星食という,「金」の文字がつくだけでなく,めずらしさでは金メダル級の天文現象が次々とおきるからだ。その先がけになるのが,5月21日におきる金環日食である。
  日食は,月が太陽をかくす現象である。月の見かけの大きさは,時期によって1割もことなる。これは,月がゆがんだ楕円軌道で地球をまわっているからで,1割ほど地球との距離がかわるからだ。月が地球に近い場所で日食になる場合,太陽全体が月にかくされる「皆既日食」となる。だが距離が遠いと月が太陽をかくしきれず,月のまわりに太陽が環のように残って見える「金環日食」となる。
  今回の金環日食は,日本でみられるものとしては,1987年の沖縄以来,25年ぶりだ。次は2030年の北海道で,18年後となる。その意味でめずらしさも金メダル級だが,今回の金環日食の大きな特徴は,なんといっても東京,名古屋,大阪などの日本の主要都市で観察できることだろう。金環日食は,月の影の中心が通過するせまい帯状の領域「金環日食帯」で観察できる。今回はそれが上記の人口密集地を通るために,ある試算では,日本のおよそ6~7割の人が,いながらにして金環日食をながめることができるという。このように日本を横断するような金環日食は,1080年以来,932年ぶりである
  日食の開始は6時台で,終了は8時30分から9時過ぎだ。金環日食帯では,その中心時刻付近(7時20分~35分)において,最長で4~5分間の金環日食となる。金環日食帯からはずれた場所でも,かなり深く欠けた部分日食が観察できるのも特徴で,北海道稚内市でも食分(欠けた幅の直径に対する割合)が0.8程度と深い。日食がはじまるころには,すでに日本各地で日の出となっている。晴れていれば部分日食を含めた全過程が観察できる。
  ただ,心配事もある。今回の金環日食は月曜日の早朝で,通勤通学時間帯にあたる。道路などで観察すると事故をおこす可能性もあるので,ぜひ安全な場所での観察をお願いしたい。また,金環日食は太陽がかなり残っているので,裸眼で見ては絶対にいけない。網膜が損傷する日食網膜症になる可能性がある。ぜひニュートン臨時増刊号の付録などの日食グラスを使い,安全に観察されることをお願いしたい。
 





この星図の日時
5月1日
 午後 11:00
5月15日
 午後 10:00
5月31日
 午後 9:00
6月15日
 午後 8:00
6月30日  午後 7:00

月の満ち欠け
(午後11時の位置)

4月29日  上弦
5月6日  満月(望)
5月13日  下弦
5月21日  新月(朔)
5月29日  上弦




5月1日

八十八夜。雑節(季節のかわり目を示す特別な日)の一つで,立春からかぞえて88日目の日。この日を前後に春から夏へと季節がかわる。

5月6日

みずがめ座流星群の極大。早朝,みずがめ座に放射点をもつ流星が散見される。1時間あたり10個以上の速度の速い流星がみられる。今年は満月が邪魔となり条件は悪い。

5月21日

金環日食。7時30分前後に東京,名古屋,大阪などで金環日食となり,ほかの地域でも深く欠ける部分日食がみられる。

5月23日

金星と三日月の接近。日没後の西の地平線付近で,金星と三日月が10度以内に接近する。

5月23日

小惑星ジュノーの衝。ジュノーがへび座で,太陽と正反対の位置にくる衝をむかえる。ただ,10.2等なので双眼鏡でもわかりにくい。何日かおいて写真を撮ると移動がわかる。

 







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